第二節のライオンズ vs チーフスは、観ていて途中で呆れるほどの派手な試合になりました。
残念ながら日本ではテレビ中継が無いためネット越しでの観戦。時間も日本時間で明け方だったので観ていた方は少ないかと思います。よろしければ試合経過を確認しながら、リンク先上部にあるダイジェスト映像などご覧になっていただけば。
軽く過去を紐解けば、両チーム合計での歴代最多得点試合であり、同時にアウェイチームの最多得点試合。更に総トライ数でも最多。アウェイチームのトライ数でも最多タイと、記録ずくめの一戦でした。
この試合後に偶然、ラグビー魂編集部のTwitterアカウントを中心に「トライを取るラグビーが面白いのか」という議論が起こりました。こちらの議論はむしろ、日本選手権での堅実なゲーム運びへのアンチテーゼとして始まった話題ですが、タイミングが丁度合って考える切っ掛けになったので、少しまとめてみようかと。
トライ量産の試合は面白かったか
冒頭にあるライオンズvsチーフスで言えば、答えは「否」です。もちろん「面白い」は主観的なものですが、少なくとも自分は50分過ぎくらいから点差が開き、気の抜けたチーフスのプレーに苛立ちすら覚えました。
もしこの試合を初めての人間と観に行っていたら、それなりの興奮はあったと思います。大きく試合が動き、ラグビーのダイナミズムを過剰に体験出来たので。しかし、これがスーパーラグビー史上で上位に入る好ゲームとは思えません。
では、トライと試合の面白さは無関係なのでしょうか。
そもそもの問題提起は何だったのか
ここで議論の発端を振り返ってみると、JOJO_NYLYさんの次の発言だったようです。
キックで陣地を稼ぎ、ディフェンスに徹し相手のミスを待ち、ゴール前をFWでゴリゴリいく、もうそんなゲームは見たくないな。TVで初めてラグビーに接した人に感動を与えられたのだろうか。
自分も、これには全くの同感です。
そしてポイントなのですが、ここでは結果としてのトライ数については何も言及されていないということです。
つまり、議題が途中で若干入れ替わってしまった感がありますが、問題は「結果としてのトライ数の多寡」ではなく「戦術としてトライを目指すか否か」なのではないでしょうか。
サッカーや野球との比較も幾つか挙げられていますが、それらのスポーツとの決定的な違いは、点の取り方が複数あることです。野球はホームベースを踏む、サッカーはゴールネットを揺らすことでのみ点が入りますが、ラグビーにはトライとゴールキックという2種類の得点方法があります。
強いてこれらのスポーツと比較するならば、例えば野球で「あくまでヒットを打とうとする過程でカットをする」のと「とにかく四球狙いでひたすらファールを打つ」の違いでしょうか。(この両者に、ラグビーで今問題になっているそれほどの違いがあるとは思いませんが)
イングランドとスプリングボックス
「キックで陣地を稼ぎ、ディフェンスに徹し相手のミスを待ち、ゴール前をFWでゴリゴリいく」と言われて、多くの人が思い浮かべるのはイングランドラグビーではないでしょうか。殊に2003年の豪州大会では、マーティン・ジョンソンによるハードなディフェンスの下でひたすら相手のミスを待ち、ジョニー・ウイルキンソンのマジックブーツで蹴り込むパターンで「世界一退屈なラグビー」と揶揄されながらも初の栄冠を勝ち取りました。更に続くフランス大会でも、同様の戦術で低い下馬評を覆しての決勝進出を果たします。
それとは若干異なる形ながら、似たような非難を浴びたのが、ここ数年のスプリングボックスでしょう。モルネ/フランソワのダブル・ステインのロングキックで陣地を稼ぎ、フォワードの腕力でブレイクダウンを制覇。密集での反則を誘い、両キッカーの正確無比なキックで得点を稼ぐスタイルは、やはり「ラグビーは地上でやるもの。空中戦は面白くない」との批判を受けながらも、圧倒的な強さでスーパーラグビーとトライネイションズを征しています。
「勝利」こそが面白さ
確かに、「ラグビーを知らない人が、好きになる」「ラグビーファンが離れていかない」という観点で見れば、これらの試合を「面白くない」と批判することに自分は同意します。
しかし、「イングランドファン」あるいは「南アフリカ国民」が喜ぶのは、やはり「面白い試合をしての敗戦」よりも、「多少退屈な試合運びであってもの勝利」です。ここにプロフェッショナルスポーツとしてのジレンマがあると思います。
今、チームに勝利に最も近づく戦術があるのに、「いや、ラグビー界全体を考えれば、そんなラグビーをすべきではない」と戦術を変えるチームは稀有というより皆無でしょう。それは残念ながら、例えば先日のTL決勝や日本選手権のような、大一番でこそ「勝利」の果実に傾くのは避けられないと思います。(個人的にはTL決勝は、まずまず面白かったですが)
スーパーラグビーの取り組み
この二律背反を解決する方法は、自分にはひとつしか思いつきません。それはシンプルに
「より面白い試合をした方が勝つ」
というルールに変えることです。
これは何ももちろん、ラグビーを採点制にして「面白かった方にボーナス点を与える」などという話ではありません。スーパーラグビーが発足以来してきているような、よりエキサイティングな試合になるようなルール調整やジャッジ基準の変更です。
これは、スーパーラグビーがそうであるように、運営側が主導権を握らなければ出来ないことです。それに選手が協力し、共に目指す「最高のラグビー」こそが勝利への最善手という意識で練習し、戦術を練っていく。安直な変更は忌むべきものですが、ラグビー協会には是非、必要以上に歴史や伝統に囚われず、2019年までに今の何倍もの人が「ラグビーって面白い!」と思ってもらえるような変革を起こして欲しいと、切に願います。
面白いラグビーとは
では最後に、その目指すべき「面白いラグビー」とは、結局どんなものなのでしょうか。
自分が考える「面白いラグビー」とは、やはり「繋ぎ」のラグビーです。
ラグビーはパスを後ろにしか出せず、つまり繋げば必ず、少し後ろに下がることになります。チームとして前進するには、パスを受けた各人が少しずつでも前に出ていくしかない。もちろん流れの中で様々なプレーがありますが、極めて単純に言えば、そのチーム全員での愚直とも言える前進こそが魅力ではないかと思っています。
右に、左に。ある者は相手を引きつけてギャップを作り、ある者は目の前の敵と1対1の勝負を挑む。チームとして意志を統一し、ある時は真っ直ぐに、ある時はトリッキーに、相手の統率を切り裂く。そんな力強さと華麗さの見える試合こそが、ラグビーファンの観たい試合ではないでしょうか。そしてそんなスポーツこそが、未だラグビーを知らない人にも魅力的に映るのでは。
そんな試合の結果であれば、幾つものトライが生まれるダイナミックな試合も、お互いに素晴らしいディフェンスを発揮してキックでなんとか得点をもぎとったジリジリする試合も、それぞれの面白さがあると思います。この段階でようやく、「玄人好みの試合はディフェンシブな~」というような話題にも花が咲いたりするのでしょうが、やはり適度にお互いに素晴らしいトライが生まれる試合の方が結果として楽しいかなと。
自分の記憶にある過去最も面白かった試合は2000年にシドニーで行われたワラビーズ vs オールブラックスのテストマッチですが、最近では昨年末のフランス vs オールブラックスも、かなりのものでした。あんな試合を観たら、ラグビーファンなんて増える一方だろうと本気で思います。
あ、最後に蛇足ですが、面白い試合の要素に「反則が少ない」は必須ですね。やたらと笛の吹かれる試合はフラストレーションが溜まる一方で…